2014年1月21日

風邪をひいております。

3日ほど、高熱にうなされておりました。母が熱にさいなまれているのを、これ長年の不義理の詫びと病院に連れていって以来です。母はどうやら新興宗教(母は宗教ではないと言い張る)の仲間がムリをして会合に来たのをうつされたらしい。
 頑丈な私の貧弱な精神にとって、大脳が熱に犯されていることは耐えがたい。軽いパニックのような状態になる。臭覚と味覚が全く失われていることがさらに、不安を増す。かろうじて感じられる事象が、かつての意味を失い、さらにはそれらの展開している未来も、ただただ不安であるというその一点を薄暗く素通りしていく。
 頻繁に測定する体温の上昇で、こりゃ病院にいくしかないと電話する。地元の病院には医者がいなかった。市立病院に電話すると、まず大丈夫ですかみたいな気持ちが伝わってきてほっとする。正常ではない今の方が、人の気持ちのあるなしに素直に反応している。インフルエンザをご心配ですか。でしたら、10時間ほどの潜在期間がありますのでと言われ、即座に今すぐに行かない方がいいとわかる。その旨を伝えると、その通りですが、もしもつらかったらいつでもおいでくださいと説明され、安心して市販薬を飲んで眠ると、断続的ながらも深く眠れた。飯を食うことと、眠ることはなんて大事なんだ。と思う。
 大脳が耐えているのだろうか。私という精神が耐えているのだろうか。もちろん私の大脳である。考えているのは私なのだろうか、私の大脳なのだろうか。熱にうなされているのはもちろん大脳の方であろう。大脳は自分自身に対することばを持っていないからわからない。なんてことを延々と考えていた。おそらくもって生まれたくせのようなものだろう。
 体温も戻り、頑丈な胃袋が飯をほしがっている今、ふりかえってみました。風の菌は細君にうつりました。零細家内企業のパートであるせいか、満足な休みもなく連日働く彼女が倒れている様をみるのはつらい。母の宗教なかまを一瞬うらむ。待てよ。問題はそんなところにはないぞ。仕事のないこの季節、彼女の稼ぎだけがたよりなのである。思えば、細君は私のような出口のない妄想にあけくれるひまもなく、子育てから家計までを心配しぬく日々をもう何年やっているであろうか。

追記。
 A・トインビーの「試練に立つ文明」がおそろしくすらすら読める。ギリシャローマさらにはラテン語による研究、オックスフォードなどなど目もくらむような知の傑作などという先入観を捨て、俺見たいなあほはあほとしてすなおに読めや、と思って読んだせいかしらん。そして衝撃的な一節に目が止まる。(事の真偽はこの際どうでもいい)

「われわれはおのれの文明のみが世界唯一の文明であると夢想する地方文明の、真にわらうにたえる奇想天外の二つの実例にぶつかるからであります。
 まるで夢のような話ですが夢ではなく、日本人は自分の国こそ「神国」であり、従って外敵の侵入には難攻不落であるということをほんとに信じていたのであります。(ところがその日本人自身は、不幸な北欧人種の「むくつけきアイヌ」こそいい迷惑で、この人種を追い払って、そう古い昔の話でもなく、まんまとそのあと釜にすわりこんでいるのです。)日本が「神国」?まさか。だって紀元1500年の日本は、シナではとうの昔、紀元前221年の始皇帝がシナをそこから救い出したところの、教化能力も何もない一個の無政府的な封建社会だったのです。シナがあれほど遠い昔に独力でやってのけたことを、日本はシナから拝借した世俗的文明と、またシナ人の御世話によって伝えられたインドの高等宗教の御馳走を1千年近くもまんまと満喫したのちでも、なおかつ成就することに失敗しているのであります。」

 長年タブー化してきたことが、かくもあっさりと言語化されていることに素直に驚いたのでした。つよがりだけど、わざと、あえて、成就させなかったから続いているんだ。お前自身が心配しているようにお前自身の西洋文明の方があぶないわい。まだもうろうが残っているな。おまえらは不安そのものだから言語も文明も強固だ。しかしこっちはどのようであれ、うたうんだ。不安のかけらもないんじゃ。まだもうろうとしているな。風邪のおかげで、休めるだろう?私の大脳よ!

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