2011年11月29日

斉川と 2011/11/29

サイカワはつらそうだった。なんとかはげまそうとして言葉を話すが、ありきたりの言葉ではダメなような気がして正しい言葉をさがす。沈黙がこわいので口は頭を置いて語り出す。
その言葉はとても自分にとって正しいが、そのときにサイカワはもういない。

大脳にだまされないように
ときには大脳をだますように
小さく頭を振るだけで大脳は簡単にだまされる
でもそこで喜んでいたら全てはだいなしだ
でも
もう大脳とケンカをするのはやめよう
大脳とうまく付き合おう。

サイカワは布団から体をおこしていた
いまの言葉が効いたのか、予定の時間がただおとずれただけなのか
目の前にサイカワがいる
サイカワとスズ

六角文庫へ 詩集「オリオンの扉」


 与呂見村 *一九九三年・夏



鬱蒼と私がある。
私の私ではない。
あなたの私。
燦然ときらめき、
蔓を伸ばし、
駆け回り、
枯死する、
蘇生する、
雨や霰の、
澱粉や蛋白質の、
彼らの私。
与呂見と名が付くものの全ての私。

日はどかどかとあり、
心もどかどかとある。

五家族  二十三人
居候     二人
馬      一頭
山羊     一頭
犬      一匹
猫      一匹
鶏     四十羽
田     二十枚
畑      五反
鍬      十本
鎌     二十本
スコップ   十本
穴窯     一基
炭焼き窯   一基
古耕運機   一台
古トラクター 二台
二屯トラック 一台
運搬機    一台
一輪車    五台
脱穀機    一台
発電機    一台
作業小屋   一棟
納屋     一棟
薪小屋    一棟
家屋     五軒
寺      一宇
水源     一処
書庫     一間
出納帳    一冊

どかどかと仕事はあり、
どかどかと空腹は来る。

これらまるごと、
ずーんと茂り、
人間だけで百本の手足、五百本の指、
それぞれ全開、合せて百二十五感が立ち動く。
空は無窮の、
雲は無涯の、
ここ。
いま。
牛虻が疾風し、蝦夷蝉が沈吟し、蜩が怒濤する。
蛹であるもの、卵であるもの、
生体であるもの、死体であるもの。
小楢から水楢、水楢から朴へ風は移り、
朴から楓へ、鳥は移る。
鵯であったか、懸巣であったか?
この山では、
鵺が鳴き、梟が鳴き、
鵤が鳴き、時鳥が鳴く。
わー・おじなんぞは赤翡翠を見かけたことも。
これらまるごと、
ずーんとうねり、
恒河のように、
澱河のように、
銀河のように、
澄んでは濁り、澄んでは濁るものの、
どこからどこまでが、
それぞれ、私なのか、
あなたなのか、彼らなのか、
そんな人称の網ではもう掬い上げることも出来ぬ。
みー・おじ風に言えば、
なんつうか、
ただもう鬱蒼と、
大根の私、
蕪の私、
玉葱を剥くような私が、
いるのだよ。
転載 泉井小太郎 作 http://rokkaku.que.jp/baku/poem/poetry.html

1993年当時、まだ私はおらず
私も私なりに与呂見村を見ていました
その私が与呂見村に入りました
現在ただただ与呂見村を言葉にすることの中に暮しています
そういう私はひたすら金がない金がないとうめいているだけなのですが

2011年11月28日

JUSAI本棚 更新


私の好きな作家は
夏目漱石
芥川龍之介
坂口安吾
時代が飛んで
中上健次
です。
明暗の中に出てくる小林という人物がずっと気になっていました。生まれた家が角地で、そのはす向かいがどちらも小林という家でした。もともと小林という姓はどこにでもありますが私の中では物語ができており、今住んでいるところにもたくさんの小林さんがいます。

2011年11月27日

JUSAI本棚 更新


JUSAI本棚更新しました。
坂口安吾です。


この人の文章はPC上でもかわらない意味を伝えている。伝えたいことを明確に記録できることが才能であって、内容は必ずその次の新たな問題だと思う。

2011年11月26日

六角文庫へ


兵庫の六角文庫から転載させていただきました。

リンク元↓
http://rokkaku.que.jp/baku/poem/poetry.html

このブログのアオサギのページへ↓
http://jusai123.blogspot.com/2011_06_01_archive.html
 アオサギ ― 仙の飢え

風に吹かれて

脛を濡らして

細い目

長い嘴

仙の風情も

なかなかに

世界に佇って

もう

てこでも動かない

そんな決心と思えたが

ふと

魚影が走ると

つーと

首を差し伸べて

なれは鳥の子

われは人の子

飢えて夕べに徘徊し

飛んでは

素っ頓狂な声も出す
作 泉井小太郎 →http://rokkaku.que.jp/index.html